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人類という生き物は、古来旅を好み、居を移し続けてきた。今ではどの大陸も人種のるつぼとなり、そこでさまざまな血が交じり合っている。だが、動いてきたのは人間だけではない。彼らに連れられて、あるいは彼らの意図せぬまま彼らと共に、種々の植物や動物が地域間を、そしてまた大陸間を移動してきた。あっけなく滅びた生物もいれば、ゆっくりと時間をかけて定着を果たしたものもいる。
今日、世界はぐんと小さくなり、見回せば私たちの身の回りにも遠い外国の動植物がごく普通に存在している。部屋の中の水槽では熱帯魚が泳ぎ回り、ベランダにはハーブが育ち、望み次第でタランチュラまでペットとなる。ところが、このように多様性を簡単に楽しめることの裏側には、恐ろしい事実が姿を現わす。「種の絶滅」だ。人間の手によって移入、あるいは人間の手を借りて侵入してきた魚や鳥や動物、あるいは植物が原産の生物より勢力を増し、その土地特有の生態系を変化させてしまったり、国産種を絶滅に追いやってしまったりする現象は世界のあちこちで見られる。たとえば、アフリカ最大の熱帯湖であるヴィクトリア湖のシクリッドは、たったバケツ一杯のナイルパーチという魚の放流がもとでほぼ絶滅に追いやられてしまったし、グアムではたった一種のヘビのために森林の鳥がすべて食い尽くされてしまった。あるいはまた、イギリスのスノードニア国立公園に目を向ければ、どこからか侵入してきたシャクナゲが猛威をふるって、原産の植物を隅へ隅へと追いやっている。
ドイツでこの分野では初めて一般読者を対象に出版された本書には、このような例が数多く綴られている。人知れず侵略を侵している生物のなんと多いことか。それらは人間の手がなければよその土地に入り込むことなどなかったのだ。種の保存が声高に叫ばれている今、なぜそもそも種の絶滅が発生したのか、それに対して私たち人間がどんな役割を担ってきたのか、そして今私たちにできることは何なのかと考えてみることも必要だろう。本書にその答えが載っているわけではない。だが、この本を読み終わった後には、これまで見えなかったものが見えてくるのは確実である。
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